はちみつのdiary

hannyhi8n1から引っ越しました。

読んだ:『改訂版 エスノグラフィー入門〈現場〉を質的研究する』

質的調査についての本をちゃんと読みたいなぁと思って手に取った。

 

小田博志 著『改訂版 エスノグラフィー入門〈現場〉を質的研究する』、春風社、2023年。

 

エスノグラフィー入門 : 〈現場〉を質的研究する 改訂版 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

そうそう、エスノグラフィーは周りのことをよく観察することから始まるんだよなぁ、旅行の日記とかちゃんとつけておくといいことあるんだよなぁ、などと最初ニコニコしながら読んでいたのだが、卒業論文書き直し(あるいは補論)を念頭に読んでいくと、特に第7章の『概念力をきたえる』と第10章『分析をする』において、かなり鍵となりそうなことが書かれていたので、発想の転換をどうするか、どういう発言から何が読み取れるのか、つまりそれって今まで考えていたことや今まで見えていた世界からはどう変わっていくということなのかが言えるようにしたいと思った。

 

一貫して調査法とはについて伝えてもらえる本である。以前、(2022年?)に佐藤郁哉さんの『フィールドワーク 増訂版 書を持って街へ出よう』を読んだ(し、ブログに書いた)けれど、それとはまた別で、調査を企画する段階から、どのように調査をしていくか、調査をしていく点で守るべきマナーや倫理は何か、といったことまでカバーされているので、私はほんとうに心の底からフィールドワークをする学部2年~3年生くらいの人たちに読まれてほしいと思った。自分でフィールドワークをしよう、ということを思った時にありがちなのが、やはり、「学生」という身分を盾に「調査」と言って傷つくこともあれば傷つけてしまうこともある、ということなので。

 

また、基本項目となる概念や定義、思想についてきちんと述べられるようにしておく、ということはとても大事なことだと思った。

 

アイデンティティー」のようなカタカナの言葉は西欧社会で発見された概念であり……ということや、たとえば「アイデンティティー」は今まで誰によって論じられてきたか、についてを基本項目として調査する視点が抜けると、自分がテーマにする概念について、「自分の思う○○」になってしまうので、論文を書く上では、どのようにその言葉がつかわれているのか、ということには注意をしなければならない。

(あたりまえだ、という人もいると思うけど)。

 

「課題」として提示されていることは、私もこの土日にやってみようと思った。

 

質的研究の手法がビジネスの場でとられている、ということが言われて久しい。ビジネスと文化人類学を結びつける取り組みなどはたとえばメルカリなどで積極的に行われていて、文化人類学に興味を持つ人も増えている。

一方で、フィールドワークの手法を好まない会社文化も一定数、存在している。数字を好んで人の話を聞いたりその場をじっくりと観察する、ということが特権的な会社でそれは行われがちではないかと思っているのだが、そういう会社でマネージメントをやっている人にも読まれてほしい本だと思っている。人の話をじっくり聞いてどんなことが課題か、課題だと思われていることは「できる」「できない」ではなく「課題」としてそこに残されている、ということを知ってほしいから。

 

次のステップとしてやることは、第7章と第10章の読み直しをすることと、それと照らし合わせて、卒業論文の書いた感想をまとめ、次に卒業論文の反省点の洗い出しをすることである。併行して、友だちからもらった『社会的包摂/排除の人類学』と、最近購入した新書を読みたいと思う。

 

パートナーが言ってくれた、「挑戦した人にしか失敗はできない。どんどん挑戦してほしい」という言葉が背中を押してくれそうな気がする。