花瓶にばらが生けられている。
数日前に、「作成した指輪と一緒にプロポーズをするんだ」とパートナーは意気込んでいて、パートナーは赤いばらの花束と婚約指輪と夜景をでもって2回目のプロポーズをしてくれた。
そのばらが今、リビングの花瓶に飾ってあって、あらためて何日か前の日のことを思い出した。
その日は人にビールとそうめんを持っていった。ビールは「晴れ風」というビールで、私はこのビール、名前も味も気に入っている。おそうめんは3袋持っていった。
時間になったので伺うと、誰もおらず、「あれ?」と思った。このことを父に話すと「なんだそれ」と言っていた。隣で母も「なんだそれ、だよねぇ」と言っていた。
そうして家に帰り、何事か書き付け、駅に向かった。見ると、目の前をパートナーが歩いていたので声をかけた。「駅に行くんでしょ? 一緒に行こうよ!」というとパートナーは「別々で行くんだ」と言う。しょんぼりしながら駅に一人向かい、電車に乗った。
電車に乗ったが、何か忘れているようでならない。電車が進めば進む程不安になるので、一度降りて逆の方向の電車に乗って、帰ることにした。
そうして不安になっていたものが何なのかが帰宅してわかり、帰宅して平穏無事であったらもう一度ビールとおそうめんを持っていこうと思っていたので、約束をしていた人のところへ電話をして持っていった。
「きれいな人だね~」と持っていった人はほれぼれと言い、ビールとおそうめんを喜んで受け取ってくれた。おそうめんは、めんつゆがあれば満足感あって食べられるし、長く保存もできるから、きっとよい選択だったのだろう。
帰宅して、パスタをつくっているとパートナーが帰って来て、二人で昼食をとった。
昼食をとった頃、洗濯をしたり、結婚式の打ち合わせをしたりとした。打ち合わせが終わった時には午後3時になっていた。洗濯物を干したり、先ほどの打ち合わせについて話し合ったりしたら午後5時を過ぎていて、私たちは出かける準備をした。
お正月に買っていたよそいき用の服を着て、お化粧もちゃんとして、お寿司屋さんに出かけた。向かう途中でパートナーは知り合いと出会っていて、ちょっとびっくりしたようだった。
お寿司屋さんのお寿司は一つ一つがArt Workとでも言うべきものだった。このお寿司については別の媒体でまとめようと思う。
いただいている間、「私はArt Work――芸術という道に生きるんだ」と思った。「この人とともに」と隣のパートナーを思う。
二人で日本酒を3合飲んだ。(「日高見」というお酒が好きだと思った)。
そうして卵焼きまで食べて、お茶を飲んでお会計をした。
午後8時前だった。
そこで、念願の『君たちはどう生きるか』のDVDを買いに行き、それを手に入れた後、バーに立ち寄った。船がモチーフになっているバーで、お酒の瓶が美しく、静かに棚一面に並んでいた。
(きりりとした味わいのお酒が私は結構好きである)。
あらためて、と言ってパートナーはプレゼントを渡してくれた。
万年筆とロルバーンのノートだった。
とっても嬉しい。
万年筆は自分ではなかなか買う勇気が出ないし、ロルバーンのノートはいくつあっても嬉しいのだ。
「ほんとうに嬉しい! ありがとう!」
と言った。
そうして、午後10時になったので、私たちはバーを出て、ある、夜景の見える場所に向かった。出会った時のことなどを語りながら。
夜景を見て、シャンパンを飲み、花束を抱えて、
「どうやってこういうことを準備したの?」
と訊いた。
パートナーは、
「自分のできる最大限のことをして、それをしたまでだよ」
と答えた。
ちょっとはっとさせられて、私はこの人のこういうところをとても尊敬しているし、好きだし、愛していると思った。(この人のすべてを愛しています)。
その時テーブルにばらが飾られていて、暗い中でよく見えなかったけれど、それは赤いばらなのだった。
今日はすごい日だな、と思った。
こういうすごい日がこれから私の人生にまだまだ用意されているんだろう、と思った。
今、左手の薬指には指輪がきらきらと輝いている。