恋人は三連休の間、大学時代の知り合いと京都に遊びに行くということだった。
同棲することが決まる前だったか後だったか忘れたけれど、
「いいじゃん 行ってきなよ~」とゆるく答えたので、彼は京都に行くことを楽しみにしていたらしい。
ところが彼は上司から「彼女を置いて遊びに行くなんて……!」と言われたので、三連休の前日に、私をご飯に誘った、というわけである。
この頃、なぜか不思議で、待ち合わせ場所に向かっていると、「どこそこにいる」などとメッセージを送らなくても会うことができるのであった。
ということで、お店に向かう途中で合流して、雰囲気のよいお店で前菜をいただき、私ははじめてサッポロクラシックを飲み、私たちは二人で買おうとしている家具について、あれやこれやと話した。
チーズフォンデュと白ワインが絶妙に合い、チーズにつける野菜もどれも美味しくてとても満足した。
なるほどとても美味しかったのだが、なんだか私は「すごい贅沢をさせてもらっている」という気になった。
その翌日に食べたのがちゃんぽんである。
私はちゃんぽんという料理をなんとなく見聞きしたことはあっても、食べたことはなかったので、「ちゃんぽんって麺料理なんだね」などと言って恋人に「それも知らなかったの」と言われた。
チーズフォンデュとちゃんぽんを食べて、私は自分が「日常生活を送る中で、どういうものを食べていきたいか」ということを考えるのであった。
東京で生活をしていた時は、朝食はなし、昼にビルの中でお蕎麦・定食・てきとうにコンビニで買ったもの、を食べ、夜もビールと柿の種で済ませるような、放埓な食生活を送っていた。
しかし、放埓な食生活ではいかん、という気がものすごくするのである。
10月の初旬、私は知り合いの夫妻に退職と引っ越しの挨拶をしに行った。
夫妻は食べることが好きで、学生時代に農業サークルに入っていた人たちである。
遊びに行くと奥様が料理をふるまってくれ、テーブルには花が活けてあり、食器なども品があり、私はひとしきり感心して「素敵だねぇ」などと行った。
夫妻曰く、「外食があまり好きでない」なのだそうである。
そりゃあそうだ。
こんな素敵な空間におり、美味しいご飯を食べられるのであれば、外食に行く必要なんて全然ない、と思った。
そんなことを思い出すのはやはり、食というものが私にとって、「生活していくうえで結構大事なもの」になっているからである。
振り返って、夜にチーズフォンデュを食べ、昼にちゃんぽんを食べる、というのはやはり贅沢すぎると思った。
引っ越したばかりでお金がなくて79円のチキンラーメンに卵を乗せて満足、という経験をしたからかもしれない。
とはいえこれからはお金も稼ぎつつ、同棲するのである。
何を食べるのを「日常」としていきたいか。
私は「料理が上手くなりたい」と切実に思った。
季節の野菜や魚やたまに肉を食べて、ご飯とお味噌汁を食べたいと思う。
今までの放埓な食生活を送っていた人間が、いまさらそんな「料理が上手くなる」を目標にしたいなんて、目標が高い、と言われるかもしれない。
外食漬けの生活をしている人(恋人含む)を満足させられる料理をつくるということが、果たしてできるのかと思われる方もいるかもしれない。
でもやっぱり憧れちゃうんだなあ。
ちなみに今私の手元に料理本は二冊しかなくて、『ゆるっと整う やさしさごはん』という本と農文協が出している『魚のおかず』という本しかない。
本を見て何かをつくる、というのは中学生の時にハマった「マフィンづくり」しかないけれど、同棲を機に料理作りが上手くなりたいなぁ、などと思うのであった。