はちみつのdiary

hannyhi8n1から引っ越しました。

読んだ:『黄泉のツガイ』5巻

母と妹が『鋼の錬金術師』(荒川弘)の大ファンである。

私は漫画は読んでいないけれど、暇さえあればアニメハガレン(2期)を流す母と妹とともに、なんとか完走してみた。

『黄泉のツガイ』は荒川さんの最新作の少年漫画である。

東村というところで前近代的な暮らしをしていた少年・ユルが「ツガイ」かつ守護神である左右様とともに、現代の都市で両親の失踪の謎を追っていく……というお話。ユルにはアサという妹がおり、アサは東村と対立する影森家というコミュニティーにいる。ユルは何者かに命やその力を狙われつつ、持ち前の行動力と精神力で前に進んでいく。

 

生死をさまよう経験、両親の不在、世界の秘密に挑戦していく、などハガレンと共通するキーワードは多くあるのだが、今回面白いのは「対になる力」という能力。登場する「対になる力」=「ツガイ」は左右、上顎と下顎、兎と亀、愛と誠など様々。

 

また、キャラクターについても、一癖も二癖もある人物が多くおり、一枚岩ではない影森家の行く末など展開にも目が離せない。

 

ということで5巻の感想です。

 

荒川さんの描くストーリーは、なんというか道をわけていくところで立つ標識みたいに、要所要所で選択権が主人公に委ねられるんですよね。「こういう状況になった。で、どうする?」みたいな。

たとえばハガレンの初期ではリオールという町での宗教と権力についての勧善懲悪をしますが、ここではエルリック兄弟が失ってきたものと、失っても希望を見出して前に進んでいくんだ、という強いメッセージが打ち出されます。

他にも、幼馴染を人質に取られ、味方として完全に信用してもらえていない人物に協力をしてもらうには? など、旅の中でメインテーマがあって、そこで主人公のエルリック兄弟は選択をしていきます。

その選択の積み重ねをしていく過程で、彼らの旅の目的とその世界の秘密がリンクし、さらに父親のルーツなどに迫っていき、旅の途中で仲間を得ていく……という壮大なストーリーが描かれていくのです。

 

今回の『黄泉のツガイ』も、状況が常に変わっていく中で、どのように交渉し、誰を敵と見極め、両親の失踪や『力』についての謎に迫るかというところが非常に見どころです。さらに前作ではエルリック兄弟として兄と弟が力を合わせていきますが、今回は兄と妹という組み合わせで、さらに妹が敵と疑われる勢力に囲われているという中で、兄の方は兄の方で前近代的で平和な生活から一変して、現代世界でサバイバルしていく様子が「先が読めない」ゆえにハラハラする展開となっています。

 

いわゆる「世界の謎を暴く系」(仮称)は、『進撃の巨人』とか『ゴールデンカムイ』に代表されるように、近年ヒットする漫画の特徴でもあるのですが、この二作と違って「ツガイ」という異能力をどう使いこなし、またどのように交渉して物語が進んでいくのかが要注目ですね。

(対して表立って暴こうとせず、ゆるさがありながらも、わけのわからない状況に読者も巻き込まれていく『ちいかわ』もヒットしていますね。また、『鬼滅の刃』はキャラクターのパワープレイが目立つ勧善懲悪物でした。最近の作品だと婚活しながら異能力バトルをしていく『マリッジトキシン』にも注目しています。)

 

ということで『黄泉のツガイ』、次巻は2024年1月発売らしいのですが、年が明けても目が離せませんね!!