はちみつのdiary

hannyhi8n1から引っ越しました。

『君たちはどう生きるか』を観て(直後の感想)

話題の映画を観てきた。

吉野源三郎の本は高校生の時に書店で流行っていたという感覚があって、うっすらと「ページをめくるのが早めの本だったな」という記憶がある。

 

あらすじについては触れないのだが、自分の世界と他者の世界の架け橋をつくるということに今までの作品の中で一番徹底していた作品だったと思う。

ある書評家さんは、「母親賛美」と評していたが、私はこの作品は「世界の組み立て方」についての話だと思った。

少年期に「世界」を知るのは難しい。

家庭から学校へと場は移り変わり、母親というつながりはなくなり、心を開けなくなった時に未知の世界へと「冒険」に向かう。

救わなくてはいけなかったり、危ぶんでいるのは本当は「自分のこころ」であり、「自分の世界」なのではあるけれど、ひとまずいなくなった人を取り戻しに出かけるという体で「世界」にコンタクトをとろうとする。

「世界」は鳥たちの声であり、海であり、塔である。

 

「世界」にコンタクトをとろうとするのであれば、ひたすら自分の心の奥――というものを見据えなければならない。

心の奥にいるのは老人で、その老人は少年に何かを継承させたいと思っている。でも継承というものはできない。世界は一人一人が組み立てていくもので、自分でコミットメントの仕方を探さなければいけないからだ。

 

観た後に、自分の本棚を眺めていて、『トムは真夜中の庭で』という児童文学が目に入り、「めっちゃ似てたな~」と思い出していた。

庭か塔かの違いだけれども、自分の領域との境目があいまいな場所があって、そこで自分の親戚の人と出会うというところが似ている。

そういう意味では、去年観たセリーヌ・シアマの『秘密の森の、その向こう』とも似ていると思った。

ただし監督の監督たるところは、メタファーにあふれているところで、「なんで鳥とかカエルとかが人間になるんだろう」とか「人形は何を意味しているんだろう」とか「子どもが産まれるってどういうことなんだろう」とかまでを読み取れないくらいの物語に仕立てているところである。

『墓の主』とか『庭の主』は過去作でも出てきたからぎりぎりわかるんだけど「出産」や「老人」は今までになかったから何かの「継承」という以外の読み解きができないんだよな……。

あと最初は、モーツァルトのオペラ『魔笛』とかとも似ていると思いました。