身体の節々が痛んで、とても重かった。今もだるさが消えない。それに伴って心の方も沈んだ。起き上がって何かをしようと思っても何もできなかった。仕方なくベッドで休む。休んでいるうちに身体がどんどん固くなり、身動きがとれない、と思った瞬間に眠りに落ちていた。
洗濯機の動く音、流れる水の音を聞きながらティーカップを取り出した。紅茶のしみがうっすらとついている。ハイターを使えばとれるようなものだから特段気にしはしない。
以前、江國香織が「生活すれば傷がつく。あなたも私も床も」というようなことを言っていたのを思い出した。
同棲生活は初期の高まりと高潔な心掛けは新雪のようなものだったに違いなかった。純白でふわふわしていて、手で掬うと淡さを残していくものたち。傷ではないのだろうが、疲れとは言わないまでも、一人暮らしとは違う生活の質にお互いまだ慣れていないのは違わないだろうと思った。
肩やまぶたの重さは依然として変わらなかった。
とても身体が重かったので、紅茶を一口飲んだ後、ベッドに行くことにした。
またひと眠りする。
起きてもう一度入浴し、飛行機のチケットを取った。
妹から電話がかかってきて、必要な書類の話だとか、「実家に帰ってのんびりすることができて楽しい」という話を聞いた。
妹の電話が切れた後、淹れていたコーヒーを一口飲んだ。
エクセルに12月に支払ったレシートを入力する。
そうしてまた二、三件電話をした後、公共料金の支払いをした。
帰宅してからまた電話をした。
電話相手だった父親は、
「お前はずっと周りに振り回されてきていたと思うよ」
と言った。
電話を切って、ベッドに這っていき、ずっと身を固くしてじっとしていた。
お腹が空いたのでカップ麺を食べ、少しテレビを眺めてまたベッドへ戻った。
なんでだろう、と思った。
どんな言葉で検索をかけても、なぜ私の身体がずっと重くて「やらなくては」と思うこともできなくて、ひたすらにじっとしていなくてはいけないのだろうと思った。
時間がある程度経った後、私はキッチンへ行って洗い物をすることができた。
ダイニングテーブルに戻ってきてまたPCを立ち上げた。
私と関わってくれた人のことを思い出したり、昔、家にいて人を待っていた時の気持ちを振り返ったりした。
身体は依然として重かったけれど、さっきよりはだいぶましになったような気がした。
外から雪の砕ける音がした。どこかで何かを揺すぶっている音もした。子どもが歩いているのかもしれなかった。
風呂に入って歌集を読んでいたら恋人が帰ってきた。
コンビニに寄ってアイスを買ってきてくれたらしい。
うれしい。
肩をマッサージしてもらったら、筋肉や骨がごきゅごきゅと鳴った。
「ただいま」と言った時の恋人の眼差しを忘れることはないのだろう。
(忘れることが出来ない)