はちみつのdiary

hannyhi8n1から引っ越しました。

読んだ:『ばにらさま』

山本文緒の『ばにらさま』を読んだ。

元旦に初詣に行った帰り、実家の方で一番大きな駅にある書店で買った文庫本で、さらにその駅から実家の方まで帰る間に表題作の「ばにらさま」を読んだ。

 

若い女性をずいぶん厳しく書く人だなあ」と思った。実際に他の短編も読んでいて、「こんな風に恋をしている人は確かに周りから見たら痛いかもしれない」とか、視点を変えて語って同一人物だと言うことをわからせる、という工夫がされているのだけれど、それでもちょっとぞっとさせる女性のこわさが書かれていて、読んでいて自分がどんな人間か試されている思いがした。

 

収録されている短編の中では「子供おばさん」が好きだ。47歳で死んだ友人の葬式に行ってきた、という人の話でこの話だけ恋愛というものを落ち着いた視点で見ている。順調に年を重ねて、生き物と暮らしていくということや、いつか自分が死ぬということを受け入れていて、穏やかさがある。

「わたしは大丈夫」や「菓子苑」は読んでいてはらはらした。この人たちの情緒はアップダウンが激しくて、でもその情緒の振り回され方もわかる気がするのだ。わけのわからない不安に突き動かされる感じ。異性と付き合っていく時の落ち着かない感じ。

 

けれども誰かのために生きようと思うことができるのであれば、彼女たちの生活も少しは穏やかなものになっていくのだろうか。

うーん、でも「わたしは大丈夫」を読んでいると生きることの必死さというか、切迫した感じを「生きること」としてしまう人もいるだろうな……と思ってしまう。

 

今、ドラマになっているという『自転しながら公転する』も読みたいと思った。