はちみつのdiary

hannyhi8n1から引っ越しました。

読んだ:『天皇制の文化人類学』

北海道出身の文化人類学者、山口昌男さんの『天皇制の文化人類学』を読み終えました~!!

 

とても面白かったです!

 

この本は知り合いの本棚で見かけた時に「面白そうだな~」と思って近所のブックオフに行って再発見し、購入した本です。

このブログでもたびたび話していましたが、文化人類学のフィールドワークに入って参与観察とインタビューをする、という民族誌的な側面での「文化人類学」というよりは、ギアツレヴィ=ストロースエヴァンズ=プリチャード、フレイザーなどの著作を読みつくした人が比較文学として、あるいは比較宗教学として書いているという印象でしたので、「時代はANT!」とか思っている人が読むと、「?? これが文化人類学? 文学の話やんけ!!」ってなるのではないかと思います。

 

私は、母が国文学科出身で、特に『源氏物語』に見られる政治性について卒論で取り扱っていた、という話を小耳に挟んでおりましたので、「文学や神話に見られる政治とは」という観点から読んでいきました。

特に、謡曲や歌舞伎、また『源氏物語』を扱って中心ー周縁について述べていたり、山口昌男の主張する「道化(トリックスター)」の役割について話されていて興味深かったです。

(そういえば『道化の民俗学』って持っていなかったっけな、はて……)。

 

さらに、氏が研究したり読んでいる人の文献が多く引用されているのですが、

その中で私が面白い・なるほどと思ったのがケネス・バークという人の話を用いてされる政治機能についてなのですが、引用します。

 

*1

 

ここの箇所など、国家・あるいは中心と言われる権力の動きについてまとめられていて、これで今のウクライナのことやイスラエルのことをある部分において説明できるのかな、と思いました。この発想は目から鱗でした。

 

また、前半は謡曲『蝉丸』についての解説であり、中盤は『源氏物語』の読み解きでしたが、後半になって、クリステヴァなどが持ち出されていて、「記号論」についての話をちゃんと理解したいなと思いました。

クリステヴァなんて今読まれてますけど、山口昌男が対談していたのは、30年近く前のことなんですよ!! まあ、当時ジュリア・クリステヴァがどのように読まれていたのか知りませんけど。うーん、今でいうジジェクみたいな立ち位置だったのかなー。

 

もちろん、書いてあったことが全部わかったわけではなくて、たとえば後半のレヴィ=ストロースの研究のナンビクアラの互酬性についてはよくわかりませんでした。あと「宇宙論的」という言葉もよくわかりませんでした。

レヴィ=ストロースにもっと迫ってみる必要があるのかもしれません。

 

今日は他にインゴルドも読むので、文化人類学の(インゴルドの中での)流れの整理なども読みつつ、山口昌男の権力と演劇性についての理解をもう少し深めてみたいと思いました。あと個人的に、卒業論文で取り扱ったという大江匡房についてもっと知りたいです!

 

 

*1:

ケネス・バークの『歴史への態度』の付論の中に「政府の七つの機能」という論文があるわけです。その中で、政府の七つの機能の中でいちばん大きなものはスペクタル、見世物を組織することだと彼は言っているのです。その見世物とは何かというと、犠牲を捧げる見世物だという。どういう犠牲がいちばんいいかというと、非中心化に向かってどんどん進んでいる人間が最も効果的な犠牲であるというわけです。(中略)国家は絶えず「ここまでだよ」という限界を示さなければいけない。((p.194