うん、女子校には行かなかったが女子大には行った。
まあ成績やメンタルも関係あるけど、中学の担任の先生の言った一言が理由でもある。
「なんで男子大学っていうのはないのに女子大はあるんだろうね」。
今考えればこれが日本の教育機関のジェンダーについて平成の学生に問いかけられたクエスチョンなのだということがわかるけれど、当時の私は、
「そうじゃん。男の子は高校までに男子校に行かないと男の子だけの学校って行くことはないのかもしれないけれど、私は別に高校で女子高にこだわる必要がないじゃん」
と思った。
北関東は公立の男女別学の学校が名門とされており、私は中学受験に落ちた瞬間に「高校は女子高に行かなければ」などと思っていたが、別に大学で行けばいいか、という気になったのは担任の一言があったからである。
昨日会った幼馴染たちは公立の女子高に進学しており、その女子高は男子校と併合した。
「あの子は高校の時すごくかわいかったよね。でも大学に進学してから彼氏ができたことが一度もないんだって」
と若干の嘲りを含んだ調子で幼馴染の一人が言い、もう一人が
「あの子は可愛かったねえ」
と現在には触れず同調した。
蝶の翅を運ぶ蟻についての歌を詠んでこの会話を思い出した。
そして男がどうとか女がどうとかいうこの世界はとてもグロテスクだな、と思った。彼氏ができたことがあるかとかないかとかいう噂もグロテスクだな、と思った。結局嫉妬の裏返しではないか。
しかし私が嘲りだと思ったのは、やはり青春時代を過ごす少女期*1にしかない輝きのことを言ったのではないかという気もした。それはもう私たちには遠くなったもので、遠くなったものについて未練を残しているというような。
前の席に座る人は、共通試験の英語の過去問を開いている。別に彼が特有というわけではなく、そういう人はこのカフェに何人かいた。
少女期特有の輝きがあれば、少年期特有の強さと言うのもまた存在する気がする。
私はそっと、
「受験英語では問われないかもしれないけど、グロテスクなこの世界で美しくあり続けるためにその問題を解いてください」
と願った。
かわいいとかかわいくないとか、そういうことで何かを切り取ったりすることのない人がもっと増えればいいのにと思う。
私の行った女子大はまあ、よく守られていたと思うし、大人になっても、かわいいとかかわいくないとかで判断するような人は少ないんじゃないか。
先生、なんで女子大があって男子大学はないか、ですか?
私は社会に飛び立つための翅をむしられないために女子大はあるんじゃないかなと思いました。
*1:高校生は少女である