ちなみに中巻は12月に読んでいた。*1
上巻の感想はこのようなものである。
谷崎潤一郎を読むのははじめてだけど、はじめての谷崎潤一郎が『細雪』でうれしい。
「阪神間モダニズム」に思いを馳せていたので、昭和初期の暮らしぶりがわかったのはとてもよかった。
妙子の奔放な感じばかり目立っていたけれど、それは彼女にとって奥畑がどれくらい厄介な人であったかということでもあったのかなあ、と思った。こいさん大変やなあと思いながら、私は幸子と同じような気分でおろおろしていたと思う。「四姉妹の話」と言われていたけれど、実質「三姉妹の話」なのでは……と思った。
読んで思ったことは、世の中の暗いところを書いた作品はとても多いし、そういうものは物語としてあふれているけれど、私はこういう中流の上くらいの階級の人たちの暮らしの話を読んでいるほうが面白いと思った。今まであまり想像できなかったものなので。
当時の習俗が描かれているというのもほんとうにそうだと思うし、時局の移り変わりなども注釈を追って読めるので「この時代からワインが飲めなくなるのか」とか「このあたりで防空訓練がはじまるのか」など、2020年代では欠けていることがわかるようになた作品でもあった。歌舞伎の何がそんなによいのだろう? とも思っていたのだけれど、『細雪』を読んで、一回くらいは歌舞伎を見てみたいなと思った。長唄と清元の区別は私もついていないのだけれど。
読み終えて雪子の縁談がまとまってよかったという気持ちと、「この夫婦はうまくいくのだろうか?」という気持ちの両方があった。まあ、雪子さんのような方にはある程度の上流暮らしをされていた方の方がよいというのはわかるのだけれども……。
読みながら、華族制度というのも不思議だなと思った。「昔の人は血が大事だった」みたいな話、それとなくよく聞くけど、養子をとってみたり、駆け落ちしてみたりして、人間のコミュニティーというものを己が欲望のために拡大させてきたことには変わらないのではないか、などと思う。
私は貞之助と幸子に好感を持ったのだけれど、他の人の目にはどういう風に映るかわからない。
温泉につかるような心地で、だらだらと読めてしまう本だった。
*1:12月はアドベントカレンダーをつくっていたので「読んだ」を更新していなかったのである