岩波書店編集部、『研究者、生活を語る:「両立」の舞台裏』、2024年、岩波書店。
友人のパートナーが研究者であり、夫妻に子どもが二人いて、「パワーカップルだ……」と思っているのだが、私たち夫婦も、いつか子どもを、と思っているので、研究者の生活について知りたいと思って読んだ。
子どもがいると、生活が子ども中心になるとか、「目の前のことをしていれば明日になっている」という(趣旨の)言葉が示している通り、研究者にとって子どもの生活というのはシングルタスクよりもマルチタスク、研究一筋の集中力よりも体力・気力の世界なのではないかと思った。ただ、学生の頃に妊娠をした方や、二児・三児を育てていらっしゃる方もいて、大変な話も多かったし、研究者という生活が安定ではないということもわかったが、それでも、自分たちが自分たちの生活をどう構築していくか、という目の前の課題を私もパートナーも両者の目線で共有する必要があるな、と思った。
すごくよく共感したのが終章の山根純佳さんのインタビュー、「ケアとジェンダー、そして権力」という章で、ケアをする側とされる側との間に政治(権力)が生まれるという話についてだ。
家事や、育児・介護といったケア――特に親を介護するのはすごく悩みも多いしつらいのですが、それらを軽減するために外注化できてよかったね、という話になったときに、その外注先の人たちを、どういう雇用関係や権力関係の中に置いているかということについて、研究者は社会的責任として考える必要があると思います。でもそれを、ケアを抱える人だけに求めるのは過剰な負担です。ケアを抱えていない人たちにも、一緒に考えてもらいたい課題です。(p.233)
また、パートナーがどういうライフスタイルを送っているか、パートナーがどういう人であったらいいと思っていたか、も研究者の生活を語る上で欠かせない要素だったと思う。たとえば、「自分の専攻科目が好きということについて理解があるといい」だとか、「このプログラムを絶対受けた方がいい」と言ってくれる理解者がいるということが、研究そのものだけでなく、ひいては生活や人生を変えることがあるのだなと思った。
私の家庭は家のことや仕事の両立について、研究者のような生活ではなかったけれど、どのように工夫をしていたのかなど、今度両親に聞いてみたいと思った。
さらに、パートナーとは今後どういう生活を送りたいかということをぼんやりとでも共有をして、その目標に向かって行くということをやる必要があるなぁ、とじんわり思った。