妹と高田馬場で待ち合わせをして、ウズベキスタン料理のプロフを食べてきた。
人参が甘くて、ラムはやわらかく、美味しかった。
妹は家でアボカドの刺身丼を食べてきたらしく、「胃に入らない」と言ったので、私は1.5人前を食べることとなった。
お店はコンクリートの打ちっぱなしのスタイリッシュなデザインで、ウズベキスタンのティーポットが棚に飾られていた。
席に着いたあとカウンターまで行って注文する方式で、進められるがままにアプリコットジュースとラズベリージュースも頼んでしまった。
食事をした後新宿に移動して、KEYUCAで食器類を眺めた。妹は気に入ったものがなかったらしかった。私は白い鉢型のお皿と小さなワイングラスを一つずつ買った。
妹と私は紅茶を飲みたい、コーヒーじゃなくて紅茶の気分だ、とさわぎ、紅茶が飲めるお店を探す途中で花園神社の酉の市に寄った。
酉の市ではお好み焼きや綿飴やチョコバナナなどが売られていて、びっくりするくらい混んでいた。出口付近に見世物小屋があり、なんだか怪しげな雰囲気だったのでつい近づいてしまったが、「見世物小屋」というものがーーつまり何かを珍しがってきちんと客席に座って眺めるということがーー嫌だったので、すぐに並んだ列を離れてしまった。
神社の中は暗くて人の気配のある何か不思議な空気に包まれていたが、外を出るといつもの新宿の街並みがあった。
「マリアージュ・フレールというところが美味しいからそこにしよう」と私が言って、伊勢丹のまわりをぐるぐる周ったが、結局満席ということだった。諦めずにルミネの方にも行ったけれど、茶葉が売られているコーナーしか見つけられなかった。
そこでてきとうに妹が見つけたお店でお茶を飲むことにした。
妹がレモンジンジャーとラズベリーで迷っていて、メニューを見ながら「ラブベリーにする」と言った。言ったあとに二人で「ラブベリーってゲームじゃん」とけらけら笑った。
注文する時に「レモンジンジャーと...」と私が言うと妹がすぐに「違うよ!」と言ったので店員さんが笑った。
そのあとに私が「ラブベリーとアプリコットを一つずつ」と言い、店員さんが後ろを向いたところで、妹がひそひそ声で、「お姉ちゃん、ラブベリーって言ったよね」と言って笑った。
妹は動画を撮ってインスタに「姉とおでけけ」と私が肘をついているところをアップした。
すぐに「めっちゃ似てる」というコメントが来て「ちょっと複雑...」と言っていた。
妹の方が小顔でかわいらしいから複雑になる気持ちもわかる。
妹が行きたいというので新宿にあるというネイル道具の専門店というところにも行った。
ネイルのカラー剤やら筆やらが売ってあった。
真剣な面持ちで選ぶ妹をみながら、私はポップの「上級」という意味について質問したり、チラシを眺めたり、かわいいと思ったシールを妹に見せたり、却下されたりして時間をつぶした。
妹は18時からマッチングアプリで男性と会う約束をしていて、それまでどうやって過ごそうかな、などと言っていた。「平日だし安いからカラオケに行こう」というと却下された。
そこで小田急に行き、私の好きなブランドの服を見たり、ゴンチャに行って飲み物を飲みながら休んだりした。
私はジャスミンティーのSサイズで150円だった。妹は慣れたもので、「タピオカミルクティー、Sサイズ、パール入り」とすばやく注文した。高校生が勉強したりしている中で、妹はこれから移動するのはだるい、と言っていた。
相手の予想到着時刻が18:00から19:00になり、絶対名前は本名を言っちゃだめだからね、などとアドバイスした。
いや、本当は子どもじゃないのだから、どんな情報を出す、とか、そもそも会うか会わないかということは責任を持って決めるべきなのだが、妹は「姉ちゃんも来てくれなーい?」などと言い始め、最初は妹と同じく移動が面倒だとも思っていたのだが、東京に慣れていないのに都会のビルのカフェに行って男性と話すという一連の流れが心配になり、つい、「姉も同席しますと言いなさい」と言ってしまった。
そんなこんなで都会のビルのカフェを探しに行き、3人で会い、コーヒーを飲みながらお話をした。
話も弾んできたかと思う頃、妹は突然「明日仕事があるので」と言い始め、早々に帰ることとなった。
「お腹すいたー」と言う妹に、「どこかで食べる?」と訊くと「行く行く! 奢るから!」と元気に言い、私たちはビルをさまよいながら誰もいないレストランで食事をした。
そうして駅の別れ際で、妹は「今日はありがとう! また電話するねぇ!」と手を振った。
駅のホームで、私は一人、妹がとても可愛かったことを思い出し、「男の子が女の子とデートし終えたあとはこんな感情になるのだろうか」などと思った。あるいは、おばあちゃんが孫に向ける気持ちはこのようなものなのだろうか、とも思った。
私たちは二人姉妹で、小さい頃はいつも一緒にいた。
妹は私のことを昔から「お姉ちゃん」「姉ちゃん」と呼ぶ。私がおよそ姉らしくない性格であるのも知っていながら「姉」と呼ぶ。
「今日一日面白かったな」と言うと妹も「姉ちゃんと遊ぶのも悪くないな」と言う。
妹と遊ぶのは楽しかった。